
インターネットで「音楽のまち」を検索すると川崎に関する情報が上位にランクインする。「音楽のまち・かわさき」がスタートして3年。この間、市民の音楽に関する活動や関心は飛躍的に高まり、ネットの上でも「川崎=音楽」というイメージが浸透してきている。
座席数約2000、有数の音響効果を誇るミューザ川崎シンフォニーホールの公演は年間150回を超え、プロにまじってアマチュア合唱団や学生のオーケストラがステージに立つなど、市民の財産として広く活用されている。同ホールを拠点とする川崎市のフランチャイズオーケストラ東京交響楽団も内容的により充実し、観客数も好調だ。
市内の商店街では集客イベントとしてストリートライブに注目、プロやアマのミュージシャンを招いて町の活性化に乗り出す動きも年ごとに目立ってきた。4月には昭和音楽大学が麻生区に新キャンパスを開設、洗足学園音楽大学(高津区)とともに「地域に開かれた大学」を掲げて学生らの演奏を市民に開放、出張指導や出前コンサートなど市民との触れ合いもさらに増えてくるだろう。
多彩な文化、芸術活動を通じて、豊かな地域社会づくりを目指す、市民ぐるみの運動は、大きな広がりをみせ、三段跳びでいえば「ホップ」から次の「ステップ」へと飛躍しようとしている。

ミューザ川崎シンフォニーホールの東京交響楽団
「音楽のまち・かわさき」推進へのきっかけとなり、その象徴的な施設の一つとなっているのが「ミューザ川崎シンフォニーホール」だ。2004年7月にオープンして以来、公演数、観客数とも順調な推移をみせている。
公演は大まかに同ホールの主催・共催および貸館事業に三分類できるが、クラシックを中心に初年度は計107の公演があり、予想を上回る約15万人の観客を集めた。2005年度も153公演で約17万人と、ともに上昇気流にある。また、プロにまじってアマチュアの合唱団や大学・高校生のコンサートが開かれるなど、「市民の財産」として有効活用されている。
市民に気軽に生の音楽を楽しんでもらうため、ワンコイン(500円)で聴ける年8回のランチタイムコンサートも好評で、来年度からは毎月行われる。また、4月からランチタイムと同じ日に「ナイトコンサート」も開催。料金は1,000円だが、ランチに比べて演奏時間は若干長く内容も充実、日ごろ、仕事に追われてコンサート会場に足を運ぶ機会の少ないビジネスマンやOLらの人気を集めそうだ。

(上)元住吉駅構内コンサート
(下)登戸東通り商店会・街角コンサート
登戸東通り商店会(多摩区)では昨年8月26日、商店街五カ所にステージを設けて「街角コンサート」が開催された。地元登戸小学校スクールバンドや専修大学ジャズバンドをはじめラテン音楽、ソプラノ独唱、フラメンコなど多種多彩なグループが次々と出演、大勢の観客でにぎわった。
同商店会では地域のにぎわいを目指して4年前から「わくわくナイトバザール」を定期的に開催しているが、この日は「地域活性化とミュージック融合支援事業」を掲げる川崎商工会議所と協力、いつもより大掛かりなイベントなった。
一方、20年近く前から商店街のイベントに音楽を取り入れているのがモトスミ・ブレーメン通り商店街振興組合(中原区)。2年前からイベント名を「フライマルクト」とあらため、商店街に3〜4カ所の舞台を設け、商店街関係者でつくる金管バンド「ブレーメン・ブラス・アンサンブル」やブレーメンで生まれた「LiLi」などが出演し、にぎわいを創出している。
年末の「クリスマスコンサート」では地元法政二高ブラスバンドなどライブを展開。昨年は東急東横線元住吉駅の改装が終わり、記念に駅の構内でコンサートを開催して乗降客らに喜ばれた。東急との話し合いの中、この「駅コン」は今後も定期的に行っていく予定だ。
このほか、例えば中原区の平間銀座商店街では毎夏、「サマーフェスタ平間」を開催し、ストリート系のミュージシャンが勢ぞろいして盛り上げる。さらに、かわさき楽大師昭和まつり(川崎区)、かしまだ一番通り祭り(幸区)、「ダンシングG祭」(中原区)、キラリデッキ・イルミネーションコンサート(高津区)など、多くの商店街が音楽の持つ「にぎわい力」に注目、今や商店街のイベントと音楽は切り離せない動きとなっている。これからもさらに高まりを見せそうだ。

昭和音楽大学・テアトロ ジーリオ ショウワ
「音楽のまち・かわさき」推進のために有力な“資源”なるのが、これまでの研究や教育を通じてさまざまなノウハウを蓄積している音楽大学だ。高津区・溝口の洗足学園音楽大学では多くの交流を通じて地域との触れ合いを深めているところだが、今年4月には昭和音楽大学が麻生区・新百合ケ丘に新キャンパスを開設。これで川崎市内には2つの音大がそろい、さらに音楽を通じたまちづくりへ向けて活発な展開が期待される。
洗足音大は大ヒットしたTVドラマ「のだめカンタービレ」の舞台となり、昨年秋の学園祭には2万人が訪れた、という。同音大が力を入れているのが「地域に開かれた音楽大学」。キャンパス内のコンサート施設「前田ホール」で学生や講師陣の演奏を地域の人々に積極開放し「対話」を図っている。
学生にとっては、大勢の観客を前に練習の成果を披露することによって、実践的な演奏技術が身に付くとともに、市民にとってはクラシックやジャズなどナマのコンサートを身近に楽しめることができ、いわば一石二鳥の効果が得られる。公演数はここ3〜4年で倍増し、講師陣らの演奏会を含めて今では年間160本以上を数える。
このほか、小・中学校への音楽講師の派遣やアンサンブルの指導、高齢者施設、病院などでの出前コンサート、市民館でのランチタイムコンサートなどキャンパス外の活動も急増し、その数は合わせて年間計50回以上もあり、増加傾向にある。
同音大関連のコンサートを好条件で聴くことができる友の会「ルフラン」も約400人の会員を擁し、ここ3年間で市民の音楽への関心は確実に高まっている。友の会「ルフラン」の問い合わせは同音大演奏部044(856)2981。
一方、昭和音楽大学はこれまで新百合ケ丘の生涯学習センターを拠点にミニコンサートや音楽関連の講座、また、付属のバレエ教室でバレエやミュージカル講座を開いてきた。また、新百合ケ丘を拠点に「しょうわジュニア・オーケストラ」を2年前にスタート、現在小学4年から高校までの約30人が同音大の講師から指導を受けるなど、「音楽のまち」の裾野拡大へ貢献している。
さらに新キャンパス開設をきっかけに今年から飛躍的に地域との交流を深める考えだ。キャンパスの“目玉”は約1300人収容の馬蹄形劇場「テアトロ ジーリオ ショウワ」。とりあえず4月から「新百合ケ丘キャンパスオープニング記念」と題して、市民らを対象にオペラやバレエ、ミュージカルなど上演披露する。
同劇場の誕生でミューザ川崎シンフォニーホール(南部)、前田ホール(中部)、テアトロ ジーリオ ショウワ(北部)と地域的にバランスよく本格的ホールがそろい、市民にとってはコンサートに親しむ機会がさらに広がりそうだ。
昭和音大「オープニング記念」コンサートの概要は次の通り。開演はいずれも午後5時半。詳細、チケット申し込みは同音大演奏室044(953)9865。▼オペラ「愛の妙薬」全2幕 字幕付原語上演(イタリア語) 4月28日、29日。S5000円A4000円B3000円。▼バレエ作品集〜古典からコンテンポラリーまで〜 4月30日。S3500円A2500円B1500円。▼昭和ウインド・シンフォニー〜昭和音楽大学吹奏楽部演奏会〜 5月3日。全席自由1000円。▼ミュージカル「みどりの天使」 5月4、5日。S4000円A3000円B2000円。

東京交響楽団「キッズコンサート」
ミューザ川崎シンフォニーホール誕生とともにここに拠点に置いた東京交響楽団は今、充実期を迎えている。その大きな理由として、音楽監督に古典音楽に造けいの深いユベール・スダーンさんを迎えたことに加えて「同ホールの存在が大きい」と熊谷仁士副楽団長は話す。
@大編成にも対応できる広い空間があり、本番をイメージしながらリハーサルが実施できるA舞台に可動式の雛壇があり、編成の大小に合わせてベストな響きを追求できる―からだ。音響的にも優れた施設を得て、楽団員のモチベーションも上がっている。
同楽団は年間150〜160公演を行い、うち約20回を川崎で行っている。観客は平均8割の入りで、満席になることも多い。また、病院や高齢者施設における室内楽の出前コンサートも年間約70回あり、市民との触れ合いと、クラシックファンの裾野拡大へ積極展開している。
同楽団が4月からさらに力を入れるのが「キッズプログラム〜0歳からのオーケストラ〜」。未就学児、小学校低学年とその家族を主な対象とした演奏会で、ミューザ川崎シンフォニーホールで予定されている。よこはま動物園ズーラシアのマスコットキャラクターたちによる金管バンド「ズーラシアンブラス」との共演で、子供たちはもとより、育児に忙しく、なかなか演奏会に出かけられないママさんらからも大いに歓迎されそうだ。