ドイツ・ロマン派を代表するシューマンとブラームスが深いつながりをもっていたこと――たとえばブラームスが世にでるきっかけを作ったのがシューマンで、ブラームスがシューマンの妻のピアニスト、クララに終生深い愛情を持っていたことなど――はよく知られています。今年度はこのふたりを取り上げ、彼らの生涯や作品をたどるとともに、クラシック音楽における「ロマン派」とはいかなる時代であったかを、コンサートの在り方やその聴衆、楽譜出版や音楽ジャーナリズムなどにも触れながら、みていきます。

【第1回 シューマン➀「成功への野望、そしてクララとの愛」】
教養ある裕福な市民階級出身のシューマンは、恵まれた環境で高等教育をうけるなか、「一流の」音楽家になるという目標を掲げ、努力を重ねますが、その野望はそう簡単に遂げられません。しかし天才ピアニストのクララとの出会い、そして彼女との愛は、彼の人生に大きな実りを与えることとなります。若きシューマンの野望、そしてクララへの愛を、彼のピアノ作品や歌曲を中心にみていきます。